RE ’04 講習会プログラム

http://www.re04.org

講習会スケジュール

 

日程

時間

講習会(英語)

講習会(日本語)

9/6 ()

9:00 ~ 12:30

T1: 要求駆動型プロダクトライン開発

T-2:ビジネスと開発の橋渡しとなる要求

 

14:00 ~

17:30

T3: 要求指向プロダクトライン開発

T4: 要求と創造性

J1: シナリオ分析入門

9/7 ()

9:00 ~ 12:30

T5 シナリオ開発の実践(演習付き)

 

J2: 要求トレーサビリティとUML への適用

14:00 ~

17:30

T6: ソフトウェアトレーサビリティ

T7: ビジネス価値に基づく要求評価

 

 

講習会のご案内

T-1 要求駆動型プロダクトライン開発

開催日: 96日(月)午前

講師: Klaus Schmid (Fraunhofer IESE, ドイツ)

略歴:  Klaus Shcmid氏は、Fraunhofer IESE 大学のRUE (requirements and usability engineering) 専攻の責任者です。彼は、プロダクトライン開発パラダイム等のソフトウェア工学技術を産業界への導入を成功させた、いくつかのプロジェクトに参加しました。Fraunhofer IESE 大学では、彼はプロダクトラインソフトウェア工学のためのPuLSE手法の最初の定義から、継続的な改善までに貢献しています。彼の研究領域は、ソフトウェア更新、要求工学、産業界におけるプロダクトライン開発の導入などです。彼は、これらに関連するトピックについて多くの論文を執筆しています。彼は、ソフトウェアプロダクトラインや、その漸進的な導入についてのワークショップをいくつか組織しました。また、現在、the Software Product Line Conference (SPLC'3) および the International Conference on Software Reuse (ICSR'8)の座長です。彼は、Kaiserslautern大学から計算機科学の修士号と博士号を取得しました。

講習概要: プロダクトライン開発手法(product line development)は、かつてないレベルの再利用、商用化までの時間や工数の削減の達成を成功させるための、ひとつのアプローチとして認められています。プロダクトライン開発手法で鍵となる課題は、再利用可能な実装の適切な機能を識別して記述することにあります。この課題を解決するためには、以下の3つの作業に正しく取り組む必要があります。

(1)   将来の製品についての明確なビジョン(例:鍵となる要求)を把握しなければならない。

(2)   プロダクトライン(特に製品の差異化)を導く鍵となる要求を把握しなければならない。

(3)       プロダクトラインの詳細な要求分析を達成しなければならない。その中で、特に共通の要求と個別の要求を体系的に識別して記述する必要ある。要求の獲得、管理、モデル化が、ソフトウェアのプロダクトラインとの関連の中で、強く結びつけられる。

本講習では、手法の課題と、それを解決する概念と技術について解説する。特に、簡単な特徴分析手法を用いてプロダクトのポートフォリオを作成します。これは、再利用の機会(スコープ化)についての体系的なROI分析の元となります。プロダクトラインのバラエティを把握するために、さまざまな手法があります(例えば、特徴ツリー)。それらの手法についても述べます。また、プロダクトライン開発手法へのスムーズな移行の支援に向けて、既存の要求工学の記法をプロダクトラインの利用できるように体系的に拡張するアプローチについても述べます。

 

T-2 ビジネスと開発の橋渡しとなる要求工学

開催日: 96日(月)午前

講師: Suzanne Robertson (The Atlantic Systems Guild、イギリス)

略歴: Suzanne Robertson氏は、全ての関係者が要求を理解できるように、要求を見つけ書き下すためのガイダンスを与える本、「Mastering the Requirements Process (Addison-Wesley 1999年発刊)」の共著者です。また、彼女は要求工学に対するVolereアプローチ(http://www.volere.co.uk)の共同考案者でもあります。

彼女は、システム仕様化および開発に30年以上の経験があります。彼女の要求、システム分析、設計及び問題解決のコースは、創造的なワークショップや実用への適用性により有名です。現在の仕事は、正しいキーパーソンの見つけ方や参加させ方、要求知識モデルの構築、および要求仕様を評価するための監査の実施についての研究やコンサルティングなどです。

彼女の次の著作は、「Requirements-Led Project Management: Discovering David’s Slingshot」は、プロジェクトを計画し運営するために、どのように要求を活用すればいいのかという疑問に答えるものです。彼女は、The Atlantic Systems Guild (http://www.systemsguild.com)の創立者で主宰者の一人です。また、雑誌IEEE Softwareの要求に関するコラムの編集者でもあります。

講習概要: 要求の語り方は、数多くあります。マーケティング部門で働いていたら、特徴に興味があるでしょうし、ビジネス部門であればビジネスに関する機能に、より興味があるでしょう。また、システムアナリストであれば、ユースケースを語るでしょうし、システム設計者ならば、アーキテクチャの構成要素に関心があるし、プログラマであればコードについて考えます。このような観点の多様さは必然的です。なぜならば、プロジェクトの各関係者は要求がどのようにかれらの関心事に関係するかという観点から要求を見る必要があるからです。しかし、これらの異なる観点をつなぐ、合意済みの「橋渡し」なしでは、要求について意見を交わしたり、管理したり、トレースすることは不可能です。要求の知識モデルがこの橋渡しとなります。

本講習では、多くの組織で要求知識モデルを作成した経験について説明します。まず、個々のプロジェクトのニーズに適応させるかのガイドラインと一緒に一般的な知識モデルから始めます。一貫した要求仕様に関するコミュニケーション方法は、組織や地理的な垣根を越えて正確に知識が伝わり、誤解を最小限に減らし、したがって、より迅速な計画や開発につながります。知識モデルは、適宜必要に応じて、戦略やマーケティング、運用、技術的なスキルを組み合わせるために、共通の言語学的フレームワークを提供する。

実用的な本講習では、同じ組織内でも人によって要求が異なる意味を持つこと、そしてそれらの意味をつなぎ合わせる「橋渡し」をどう構築するかを扱います。講習は以下の5つのセクションからなります。

1.      対象領域の調査

適切な関係者を特定し、巻き込む

2.      一般的な出発点

異なる観点から最小単位となる要求をパッケージ化するモデル

3.      自分のプロジェクトへの適応

特定のプロジェクトに対してモデルを適応化させる方法

4.      体験を把握するための修正

繰り返し及び参加のための手法。モデルの安定性のモニタリング

5.      モデルの利用

プロジェクト計画作成へのインプット。知識、詳細レベル、品質の評価基準、知識のパッケージ化、合意のとれたトレーサビリティに対する責任。

 

T-3 要求指向プロダクトライン開発

開催日: 96日(月)午後

講師: Michael Mannion (Glasgow Caledonian Univ., イギリス)Hermann Kaindl (Vienna U. of Tech., オーストリア)

略歴: Michael Mannion教授は、英国はスコットランドのグラスゴーにあるグラスゴー・カレドニア大学において、計算・数理科学に関する専門学部の学部長です。彼は、ブルーネル大学でコンピュータ科学の学士となり、さらにブリストル大学において人工知能の博士号を取得しました。彼は、数年来のソフトウェア工学産業の経験を持ち、ソフトウェア再利用に関する英国コンピューター協会特別利益団体の元委員長です。また、英国立宇宙センターのソフトウェア運営グループのメンバーを務めました。彼はエジンバラのネピア大学で8年間教鞭を取り、それから2000年にグラスゴー・カレドニア大学で教授職に就きました。彼は40本以上の論文を発表しています。教授は1年前に、オーストリア・ウィーンのウィーン工科大学でコンピュータ技術研究所に加わりました。学究生活に移る前には、彼はシーメンス社オーストリアにおいてプログラム・システム工学部門の上級コンサルタントでした。そこで彼は、ソフトウェア開発における24年間以上の業務経験を得ました。彼の現在の研究対象は、要求工学とヒューマンコンピュータインタラクションに焦点をおいたソフトウェア工学を含み、それがシナリオベースの設計に関するものとなっています。彼は3冊の著作を出版し、また査読付き論文誌、本、会議議事録に70本を越える論文を掲載しました。彼はIEEEの上級メンバー、ACMとINCOSEのメンバーであり、またAustrian Society for Artificial Intelligence(人工知能のオーストリア協会)の取締役会メンバーです。

講習概要: 再利用と要求は、システム開発を効率的に行い、そして成功させるために非常に重要です。しかしながら、それら(特に要求の再利用)をうまく実行するためには、多くの未解決の問題があります。本講習では、「Method for Requirements Authoring and Management(MRAM)」を使った要求再利用の経験的知識を示します。現代の・高度に複雑な・信頼性の高いシステムにとっては、適切に構築され・注意深くコントロールされた要求仕様が、理解可能で・完全で・そして矛盾がないものであることは、コンピュータシステムが結果として時間通りに・予算内で・希望する高レベルの品質で納入されるために極めて重要です。
これらの問題に対処するアプローチの1つは、再利用可能な要求のプールを確立し、新しいシステムのための要求を、そのプールから選択しながら構築するというものです。このアプローチに対する懸念の1つとしては、矛盾のない要求の組み合わせを、効率的に明確に選択することがあります。矛盾のない組み合わせとは、選択された要求が、再利用可能な要求のプールによって与えられるいかなる制約も満たす、というものです。MRAMでは、要件を確立し、製品種目から要件を選択するという方法で、この懸念に取り組みます。MRAMを使用するということは、要求定義プロセスの管理がより有効で効率的であり、より正確で完全な要求ドキュメントを作り出すことを意味します。そしてTRAM(Tool for Requirements Authoring and Management)は、現在実績のあるオフィス技術(MS-Word, MS-Access)を利用して、MRAMを支援するためのソフトウェアツールです。本チュートリアルでは、MRAM/TRAMの結果について、実世界のアプリケーションに適用してきたものを示します。

 

T-4 要求と創造性-創造を要求工学に結びつける

開催日: 96日(月)午後

講師: Suzanne RobertsonJames Robertson (The Atlantic Systems Guild, イギリス)

略歴: Suzanne Robertson氏についてはT2の講師略歴をご覧下さい。

James Robertson氏は、製品の要求や、良い要求によるプロジェクトの成功への貢献についての、コンサルタント、教師、著者、そしてプロジェクトリーダです。Robertson氏は、要求プロセスへの創造性の導入に関する原理の提案をリードしています。彼の論争を呼んだ「Eureka: Why Analysts Should Invent Requirements」(IEEE Software 20027月号)という記事は幅広く引用され議論されました。

システムエンジニアにある前は、Robertson氏は建築家でした。建築家としての経験が発明や創造性に関する仕事でのインスピレーションになっています。彼は、「Mastering the Requirements Process (Addison-Wesley 1999年発刊)」の共著者です。また、要求工学に対するVolereアプローチ(http://www.volere.co.uk)の共同考案者でもあります。近刊の共著「Requirements-Led Project Management: Discovering David’s Slingshot」は、プロジェクトを計画し運営するために、どのように要求を活用すればいいのかという疑問に答えるものです。彼は、The Atlantic Systems Guild (http://www.systemsguild.com)の創立者で主宰者の一人です。The Atlantic Systems Guildは、新たなシステム工学手法の研究や、良いアイディアにアクセスしやすくするための実績により知られているシンクタンクです。

講習概要: 要求分析の伝統的な仕事は、人々に何が望んでいるか、また必要としているかを尋ねて、その内容を要求として仕様化することです。しかし、しばしば人は自分が何を望んでいるかを知らないし、何が可能かを知らない、もしくは創造することもできません。したがって、彼らは当たり前の要求、すなわち彼らの経験内の範囲の要求、を伝えてきます。しかしながら、最も役に立つ製品は、小さな改良の繰り返しからではなく、「非連続的なジャンプ」、すなわち発明から生まれることがあります。

慣習を単に受け入れるかわりに、要求工学のエンジニアは、顧客の仕事を改善するための何かを発明できなければなりません。この講習は、より役に立ち、使いやすく競争力のある製品を発明するために、創造的な手法をどのように活用するかについての実践的なガイドとなります。

この講習のコンテンツは以下に基づいています。

     ユーロコントロール航空管理システムの創造的ワークショップのシリーズ。これは、シティ・ユニバーシティのHCIデザインセンタ(ロンドン)のニール・メイデン氏および、アトランティック・システム・ギルド(ロンドン)のスザンヌ・ロバートソン氏により運営されました。

     アトランティック・システム・ギルド(ロンドン)のジェームス・ロバートソン氏の要求と発明の関係に関する研究やプロジェクト。これには、要求分析者が発明者でなければならないか、及び、要求を引き出す発明的なきっかけをいかに使うかについての発見を含みます。

講習のセクションは、以下の通りです。

1.創造性とは何か?どうして必要なのか?

創造的思考の分野における原則

2.要求を引き出す発明的なきっかけ

要求を引き出す発明的なきっかけの使い方:競争力のある創造的な製品につながるサービス、アイディア、スピード、情報、技術、選択、参加、設計、原点、センス。

3.航空制御ワークショップの話

ワークショップ運営の様子。その結果の定量化

4.専門家と類推

創造的なアイディアを生み出すために他の分野の専門家や、類推的な思考法をどのように用いるか。

5.創造性の統合

いかにして既存の要求工学プロセスに創造性や発明を取り入れるか。創造的ワークショップの企画・運営。

6.創造的な行動

鍵となるアイディア、経験則、行動計画。

 

T-5 シナリオ開発の実践(演習付き)

開催日:9月7日午前

講師: Ian Alexander (コンサルタント)Alistair Mavin (Praxis Critical Sysmtes)

略歴: Ian Alexander氏は、要求工学に特化した独立コンサルタントです。彼は、よくDOORS手法をベースに、要求についてのコンサルティングやトレーニングを行います。彼は、JBA 3-Day Requirements Engineering Workshopの著者であり、JBA's 3-Day Systems Engineering Courseの共著者です。彼はTelelogic's 2-Day Applying DOORS, DXL, and Requirements Methodology coursesおよびthe Atlantic Systems Guild's 3-Day Mastering the Requirements Process courseの講師として認定されています。彼は、シナリオを用いて要求工学プロセスを改善することを目指しており、現在ドイツのウルムにあるDaimlerChrysler Research & Technology Centreと一緒に、自動車の各モデル間で要求を再利用することを検討しています。彼は、「Scenario Plus for Use Cases」というツールキット作成しました(そのツールキットはhttp://www.scenarioplus.org.ukで入手可能)。彼の本、「Writing Better Requirements (Addison-Wesley 2002)」、では、要求は人間から来るものであることが強調されており、要求をどのように発見し構造化するについての実践的なアドバイスが述べられています。彼は、一般誌や査読論文誌に、要求工学における人間的側面についての多くの論文を書いています。彼は、BCS Requirements Engineering Specialist Groupおよびthe IEE Professional Network for Systems Engineersを運営しています。彼は、公認エンジニア(Chartered Engineer)です。

Alistair Mavin氏は、要求、システム、ソフトウェア、および安全工学を専門とするイギリスの会社であるPraxis Critical Systems Limited(http://www.praxis-cs.co.uk/)のシステムエンジニアです。彼は、航空、軍事、航空管制、鉄道、自動車や地方自治体等の業界における要求工学に取り組んでいます。Mavin氏は、Praxis社のREVEAL®という要求工学手法を用いて、彼の顧客のプロジェクトでシナリオ分析を日常的に行っています。彼は、顧客の組織内のエンジニアリング能力を向上するために、REVEALを用いた能力向上プロジェクトに参画してきました。彼は、REVEAL4日間の実務家向けトレーニングコースの認定トレーナーであり、British Computer Society Requirements Engineering Specialist Groupのメンバーです。

講習概要:  多くのエンジニアリングプロジェクトは、全ての機能を提供できなかったり、予算をオーバーしたり、納期を守れなかったりしています。これらの問題を解決するひとつの方法は、システムに何をさせるべきかを、より早期に、より注意深く定義することです。したがって、エンジニアは関係者のニーズを得るための効果的な意思疎通の方法を用意する必要があります。それを達成するための最も強力な方法のひとつが、シナリオです。シナリオは、簡単な(システムではなく)人間を中心とした物語形式で、通常一連の作業として構成されています。

RE 03における Alistair Sutcliffe 氏のシナリオ手法の素晴らしい講習に比べ、この講習は、組み込みシステム等のような、産業界でのシナリオ作成に必要な実用的なスキルを広めることに焦点を当てています。この実習形式の講習では、参加者は理論を学び、シナリオ分析の実践について経験することができます。人間を中心とした繰り返しプロセスに基づき、明確に定義された簡単な手法を使います。このプロセスでは、ミッションや目的を定義することから始めます。次に、関係者と、その関係者の観点を特定します。そして、シナリオに注意を向けて、シナリオとしてラフなストーリーを作成し、例外的なシナリオを調べて、発見したシナリオを検証します。簡単な例として、あるハードウェア/ソフトウェアの組み込みシステムを全ての演習で利用します。そのシステムは、登山家、散策する人、キャンプする人、釣り人などの、野外スポーツ愛好家がナビゲーションや天気予報、迷ったときに救助を得たりするための、多目的のポータブルデバイスです。また、演習の参加者が考え出した他の機能も併せ持つことになります。講師陣は講習の参加者にシナリオに関する背景知識となる論文を提供します。また、日本の皆様が参加しやすいように講習教材の和訳を配布します。

 

T-6 ソフトウェアトレーサビリティ

開催日: 97日(火)午後

講師: George Spanoudakis、Andrea Zisman (City University London, イギリス)

略歴: George Spanoudakis 博士は、City University Londonで計算学科の上級講師であり、この学科の副部長であり、その研究における個人指導上級教授です。彼は、コンピュータ科学において博士号、修士、学士を持ち、またクレタ大学のコンピュータ科学科における客員助教授(2000年)、ロンドン経済大学の情報システム科の客員講師(2000年)です。George は、ソフトウェア工学の分野での多数の国際会議およびワークショップのプログラム委員会で貢献し、IEEE Transactions on Software Engineering と、ACM Transactions on Software Engineering and Methodology を含む国際的な科学論文誌の査読者を務めました。最近、George はトレーサビリティの領域で、2つの国際的なワークショップ(ASE '02 と ASE '03 共に)を組織し、また International Journal in Software Engineering and Knowledge Engineering の特集号において、ソフトウェアトレーサビリティについて編集しています。ソフトウェア工学の領域における彼の研究は、複遠近法(multi-perspective)によるソフトウェアモデリング、ソフトウェアモデルにおける矛盾の管理、ソフトウェアトレーサビリティと測定、ソフトウェア再利用に関するものです。George には、これらの領域において、45以上の出版物があります。より詳細な情報を得るためには、http://www.soi.city.ac.uk/~gespan をご参照ください。
Andrea Zisman 博士は、City University Londonで計算学科の上級講師です。彼女は、コンピュータ科学で博士号、コンピュータ科学に関する応用数学で修士、コンピュータ科学で学士を持っています。この職に就く前には、彼女は、英国のロンドン総合大学におけるコンピュータ科学科の研究フェローであり、ソフトウェアシステムコンサルタント、開発者、アナリストとして働いていました。Andrea は、アメリカのAT&T実験研究所で客員研究員でした(2003年)。Andrea は、自動化ソフトウェア工学と分散データ管理の領域で研究活動を行い、そこで幅広く出版活動を行ってきました。彼女の研究は、ソフトウェア生成物のトレーサビリティと矛盾のない管理、分散システムの検証、分散データソースの相互運用性、そしてXMLとWebサービスアプリケーションに関心を持っています。Andrea は、様々な国際会議およびワークショップの組織化およびプログラム委員会に貢献し、国際論文誌における査読者を務め、様々な国際会議で講習を行っています。彼女は、トレーサビリティの領域で、2つの国際的なワークショップ(TEFSE'2002、TEFSE'2003)を組織し、また International Journal in Software Engineering and Knowledge Engineering の特集号において、ソフトウェアトレーサビリティについて共同編集しています。より詳細な情報を得るためには、http://www.soi.city.ac.uk/~zisman をご参照ください。

講習概要:ソフトウェアトレーサビリティ、それはソフトウェアシステムの開発の間に作成される生成物(例えば、要求、設計、そしてコード生成物)について、生成物同士、それらを作成したステークホルダー、およびそれらの厳密な形式の根本理由基盤とを関連付けるための能力です。それは、ソフトウェア開発およびメンテナンスプロセスにおける重要な能力であり、最終生成物の品質を決める重要な要素として認識されています。トレーサビリティ情報は、次のものを支援するために使用することができます。

  • 潜在的関係の分析と、システム開発プロセスで要求される変更の統合
  • ソフトウェアシステムとドキュメンテーションのメンテナンスおよび進化
  • ソフトウェアシステムの再利用と、それらのコンポーネント
  • ソフトウェアシステムの検査および試験

ソフトウェアとシステム工学のコミュニティでは、トレーサビリティの領域に長く永続的に興味を持ってきており、トレーサビリティを確立し維持するために、多数のアプローチおよび技術を開発しました。より厳密に言えば、この領域における研究は、主として次のような研究および定義に関心があります。
  • 異なるタイプのトレーサビリティ関係
  • これらの関係の生成
  • トレーサビリティ情報を管理するためのアーキテクチャ、ツール、および環境の開発
  • ソフトウェア開発ライフサイクルにおける、トレーサビリティ情報の確立と展開に関する組織的な実践の経験的な調査

本講習では、ソフトウェアトレーサビリティにおける技術および実践の状態について概観を示します。さらにこの領域の主要な科学的かつ技術的な進歩について議論し、利用可能な技術、およびそれらの寄与を示しながら、領域の中でより進んだ研究を必要とする問題について識別します。この講習は、ソフトウェア開発、およびソフトウェアシステムと開発プロセスの管理に興味を持った職人技術者、管理者、研究者、教師を意図して作られています。しかし、コンピュータ研究の大学カリキュラムにのっとった学生が、全学年から参加する可能性もあります。

T-7 ビジネス価値に基づく要求評価

開催日: 97日(火)午後

講師: Jane Cleland-Huang (DePaul University, アメリカ)

略歴: Jane Cleland-Huang博士は、DePaul大学のSchool of Computer Science, Telecommunications, and Information SystemsAssistant Professorです。彼女の研究対象は、価値に基づくソフトウェア工学及び要求仕様のトレーサビリティ等です。彼女はシカゴにあるInstitute of Software Engineeringの副所長で、また、DePaul Center for Applied Requirementsのセンター長です。Cleland-Huang博士は、最近「Software by Numbers, low-risk, high-return development」という本を共著しました。この本では、ソフトウェア工学への財務的に考慮されたアプローチが記述されており、速攻的および計画的な開発コミュニティの両方から高い評価を得ています。彼女は、IEEEコンピュータ・ソサイエティの会員です。

講習概要:本講習は、IFM(Incremental Funding Method)という、財務的な裏づけのある、要求の優先順位付け手法について紹介します。この手法は「Software by Numbers: Low-risk, High-Return Development」という本に説明されています。ご参加された方は、要求をMMF(Minimal Marketable Features)という収入獲得のための機能群にまとめる手法を学べます。また、プロジェクトの全体的な価値を最大化させたり、初期投資を減らしたり、さらに、プロジェクトが損益分岐点に達する時間等のプロジェクトの定量的な指標を操作することを学べます。簡単な財務分析の入門的な解説は、参加者が他の要求の優先順位付けの結果が、プロジェクトの財務的な業績に与える影響を理解し分析する場合の一助となるでしょう。この手法は、Rational Unified Processのような、繰り返し的な開発アプローチや、もっと臨機応変な環境においても適用可能です。

 IMFを実際のプロジェクトで利用するために必要な概念や手法を紹介するだけでなく、この講習には、参加者が学習した原理を適用ための実習も含まれています。参加者全員は、独自のソフトウェアツールや講習・テキストがもらえます。

本講習は、開発者、プロジェクトマネージャー、プロセスの専門家、CIOChief Information Officer)、CTO(Chief Technological Officer), CFO (Chief Financial Officer)や、財務的な価値創造としての要求優先順位付けの習得に興味のある全ての方をターゲットにしています。講習に関する詳細な情報は次のホームページをご覧下さい。

http://facweb.cs.depaul.edu/jhuang/RE04/Tutorial.htm

 

J-1 ビジネス価値に基づく要求評価

開催日: 96日(月)午後

講師: 郷 健太郎(山梨大学)

略歴: 1996年東北大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了.博士(情報科学).同年東北大学電気通信研究所助手.その後,バージニア工科大学Center for Human-Computer Interaction研究員,山梨大学工学部助手,同助教授を経て,2003年より山梨大学総合情報処理センター助教授.大学院在学中から一貫して,上流工程でのシステム設計法の研究に従事.特に,情報通信システムの仕様記述法,シナリオに基づく設計法に関する研究を行っている.ACM,IEEE,電子情報通信学会,情報処理学会,ヒューマンインタフェース学会各会員.著書に,『要求工学』(共立出版,2002)(共著),『シナリオに基づく設計』(共立出版,2003)(翻訳)がある.

講習概要:ユーザにとって魅力あるシステムや,使いやすいシステムを開発するためには,潜在的なユーザの要求を抽出して,製品として形にする必要がある.そのためには,開発対象の製品をユーザがどのように使うかを分析して想像しなければならない.つまり,作り手から見れば,良い「シナリオ」作り上げることができるかにシステム開発の成功が左右されているといえよう.本チュートリアルでは,シナリオ作成に関する議論を行う.
チュートリアルは2部構成で実施する.前半では,シナリオに関する概要を説明する.要求工学の活動におけるシナリオの位置づけを議論し,システム開発におけるシナリオの役割を概観する.チュートリアルの後半では,参加者とともに,実際にシナリオを作成して評価する.主としてユーザの作業を明確化するという観点からシナリオを作成し,分析を行う.

 

J-2要求トレーサビリティとUML への適用 [日本語]

開催日: 97日(火)午前

講師: 山本 修一郎、我妻 智之(NTTデータ)

略歴: 山本 修一郎 昭和54年,名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻修了,同年日本電信電話公社入社.横須賀電気通信研究所入所.平成12年,名古屋大学より博士(工学)の学位を授与.平成145月に株式会社NTTデータへ転籍.電子情報通信学会,情報処理学会,人工知能学会各会員.2000年〜2001年知能ソフトウェア工学研究会委員長.

 

我妻 智之 平成13年,慶應義塾大学大学院理工学研究科修了,同年(株)NTTデータ入社.

講習概要: 要求仕様のトレーサビリティはソフトウェアの品質向上には必須である.例えば,トレーサビリティのリンクを正しく管理していなかった場合,設計書内に混入した予期せぬ誤りを適切に見つけ出すことができないことがある. 本チュートリアルでは,初めにトレーサビリティの概念や定義を示し,最新の技術動向について紹介する.続いて近年のソフトウェア開発におけるUML利用の普及を受けて,UMLで記述された要求仕様書や設計文書間のトレーサビリティを表現する方法について紹介する.また,それをUML MOF標準に基づいてメタモデル化する方法を紹介する. UMLで記述された設計文書間に定義されるトレーサビリティのリンクは大量で複雑になることがある.要求仕様書や設計文書を正しく分析するためには,これらを適切に管理していなければならない.そこで,こうした問題に対処するためにUMLモデルをモデル要素単位で蓄積することができるMOFリポジトリを紹介する.これは当社とFOKUSIKV社の共同で開発したものである.さらに,このMOFリポジトリ上でトレーサビリティのリンクがどのように管理されるかについて説明する. 最後に,変更インパクト分析や変更管理,さらにモデルのメトリクス分析に対してトレーサビリティを適用する方法について紹介する.また,それらがMOFリポジトリを使ってどのように実現されるか事例を交えて紹介し,その利点および今後の課題を説明する.